6/1のしゅちょう
            文は田島薫

(冗談の難しさ、について)


わが国の若者に人気の職業はなんだ、って言えば、昔からスポーツ選手とか、

医者とか、変わらないものの他にその時代ごとの流行のような人気の職業があ

るようで、私の時代はデザイナーブームで、大勢がデザイナー目指してたんだ

けど、今はIT業界の需要が多いようで、その需要に見合っただけ目指す者がい

るのかというと、どうも技術的に難度が高いせいか供給は足りないらしい。逆

に昔のわれわれのように軽い気分で目指したいのはお笑い芸人、ってぐらい希

望者が多いようなんだけど、結局われわれの末路と同様、需要の量より希望者

の比率が高いこともあり十分な収入を得られる者は少数、ってことになる。

情報時代で空気のようにタレントを見てると、友人を笑わせることができる自

分にもお笑い芸人になっておもしろおかしく稼ぐことができるんじゃないか、

って思ってしまうのかもしれないんだけど、多分いつでも安定して人々を笑わ

せるには、その基礎的認識や感性と独自のアイデア創作や話術の訓練などを身

につけなければならないことにやがて気づいて多くの者が挫折するか、自分な

りの身の丈で努力を続けて頑張るか、ってことになるのだ。

そういったプロを目指した者たちはいずれにしても、人を笑わせることの難し

さを実感するはずで、それは失敗して他の職業に転じたとしても人生の役にた

つことになるんじゃないか、って思うんだけど、問題はわれわれのような素人

が、発する無責任な冗談の問題点を認識しておく必要があるかも。

それは、私自身が若いころからずっと失敗し続けて来て今だにそういったクセ

がぬけないんで、自戒の気分もあって、ちょっとだけそれの認識について整理

しといてみようかな、って思ったのだ。

多分巷で非難が多いオヤジギャグ的ダジャレみたいなのはだれも傷つける心配

がないんで問題外として、避けるべきはだれかを傷つけるようなもので、冗談

を言う側にそのつもりがなくてもそう受け取られることがあるわけで、悪態風

の冗談などがそれだ。昔サッカーが盛んな地元の飲み屋で、私が軽いサッカー

談義のひと言ふた言を別の席の知らないオヤジと交わして少し反対意見を言っ

たところ、そのオヤジ、あ〜、ぼくはサッカーをよく知らないからね〜、って

あきらかに、皮肉っぽく冗談を言ったんで、私の方もその冗談に答えるつもり

で、少しふざけた口調(のつもり)で、あ〜、サッカー知らないクソオヤジい

るんだよね〜、って言ったら、なんだとー、って怒ったオヤジ立ち上がった。

たしかに、自分じゃおもしろい冗談の気がしても、逆の立場でそう言われたら

私だって、あははは、って笑えずに、同じように怒るかもしれないわけで。


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