9/2のねこさん 文は田島薫
パネの長い追跡
先週の火曜の晩、私と家人は旅行の夜行バスに乗るためリュックや大きなバッ
グを肩に下げ、駅に向かって歩き出し、1ブロック先を左折しまた次の2ブロッ
クを過ぎ3ブロックめの坂を上リだした頃、後ろの方からねこさんの大きなな
き声が聞こえるんで、ふたりでふり返ってみると、マンションの植え込みの陰
にねこさんらしい影が犯人を追う刑事かなんかのように隠れながらついて来る
のが見えた。そばへ行くとパネだ、ってことがわかったんだけど、パネはわれ
われのそばへ駆け寄るんでもなく、どうやら、われわれの行く方へ一緒につい
て行く決心をしたようで、帰りなさい、って一旦言い聞かせて歩き出しても、
また間合いを取ったままついて来るもんで、われわれも一旦パネを誘導して家
へ戻り、反対の方向のいつも近所のスーパーへ行く時に上がる家の前の坂から
迂回することにしたら、パネは安心したようでもうついて来なかった。
ごはんも食ったし、夕涼みしてくつろいでるてーと、あれ〜、おっかし〜ね、
おばさんたち大きな荷物持ってどっか行くみたいだぞ、こんな夜遅くどこへ行
くんだろ〜、やばいやばい、ぼくらを置いてどっか遠くへ行っちゃうかもしん
ないじゃね〜の、そ〜したら、ぼくらの毎日のごはんはど〜なるんだ、こりゃ
やばいやばい、仲間のみんなはなんでこ〜のんきに寝転んでられんだろ〜な〜、
明日からごんもらえなくて、みんな腹空かせたまま死んじゃうかもしんない、
つー時だつーのに。よし、そんなことんならないよ〜にリーダーのぼくが、な
んとか行き先をつきとめておこ〜、ばれないよ〜に隠れながらず〜〜っと、つ
いてけばい〜、つーことで、でもできれば考えを変えてもらう方がい〜から、
いちお〜、もどってこいよ〜、って言いながらついて行くことにすっか、もど
ってこいよ〜、もどってこいよ〜、もどってこいよ〜、あ、もどって来た、ど
〜やら考え変えてくれたみたいだね、よかったよかった。