9/17のしゅちょう
            文は田島薫

(自然材住宅の価値、について)


日本列島各地をけっこう広く浅く旅行した経験もふまえて、いいな〜、って情緒を感

じる場所は、手付かずの大自然を遠望できる、ってのは基本だとしても居心地のよさ

がなければ、釣り好きとか山登り好きとかサバイバル好きの冒険家以外は、何日もそ

んなとこのど真ん中でテント張って過ごしたい、ってような人はさほどいないだろう。

で、一般的に人気の旅行目的地は、温泉地とか古都とか、ってことになるだろうと思

うんだけど、京都や鎌倉といった場所でも近年は古い木造建築の代わりにコンクリや

新建材の建物が増えて来てるようで、これじゃ、景観がだいなしだろう、って感じる

外国人や感性のある若者たちなどが、取り壊し寸前の町家などを修繕して宿に利用し

たり、新築する商店の建物も昔風に造ったり、ってことを進めてるようで、こういっ

たやり方が広まるのは、特に観光地では有効だろう。

先日、東日本大震災の被災地を旅行して来たんだけど、海辺にあった街がなくなって、

また同じ場所に街を造ろう、って気にはなれないだろう、って住民の気分を行政が勝

手に忖度したんじゃないか、ってぐらいに、すぐに10メートルぐらいの防潮堤の工事

が続いてて、高台に復興住宅が団地のように並びだしたりもして、復興途中なんだか

ら仕方ないだろう、って行政は言うのかもしれないんだけど、海が見えにくい防潮堤

の前に今だ殺風景な野原が広がる場所を多く見かける。

われわれのように、けっきょくは被災地のつめ痕を見物に来るだけの者、はいても、

ここへ観光へ来て楽しもう、って気になる者は今は、さほどいないだろう。

これからは、その景観的ハンディをどう逆転させて行くかが大事なテーマになるはず

で、それは現地の住民や行政が色々と考えてるはずだろうし、門外漢の私がとやかく

言っても余計なお世話だろうけど、勝手に一言意見を言わせてもらうことに。

今後は行政も資金支援して、何百年に一度の大津波に備えて避難経路と防火対策は充

実させておくことは前提にして、昔の風情を復活させる住宅や街を、土地のかさ上げ

したとしても海辺近くにわが国の放置山林で有余る「杉材」を使って造り変える。

で、東日本被災地だけでなく、日本全国の古い伝統の街は無論のこと、どこの地方都

市でもこれを徹底すれば、わが国は観光立国でも行けるし、気持のいい景観の環境で

生活することができるわれわれ国民の情緒も安定し、あくせく働いて最先端機器を買

いそろえるだけが人生の価値じゃないことに、みんなで目覚めるかもしれない。

ちなみに、わが家は30年ちょっと前、友人の自然材建築会社に杉材でとても安く建て

てもらったんだけど、私の情緒はすごく安定してる気がする。


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