映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、独自に活動する映画制作者に、より興味を惹かれるようです。
『二宮金次郎』公開前トーク
時代劇作りの裏話に興味があり、シナリオセンターで開かれた『二宮金次郎』の監督と
脚本家によるトークイベントに行ってきた。
公開は一般の映画館ではなく、東京都写真美術館。なぜだろう…と思っていたら、その
説明が始まった。
五十嵐監督によると、実は公開劇場は決まっていたのにキャンセルしたとのこと。ある
時、地方の公民館での映画上映会に、杖をついたお婆さんがゆっくり歩きながら来たの
を見て「このお婆さんの様に都会のシネコンには来られないであろう人たちに映画を届
けよう」と一念発起。プロジェクターとスクリーンを購入し、車で地方を巡るのだそう
だ。すごい!
ではなぜ二宮金次郎か。
別仕事で訪れていた所が二宮金次郎の生まれ故郷だと知ったのがきっかけだったとのこ
と。二宮金次郎と言えば、誰しも思い浮かべるのは薪を背負って読書している少年だろ
う。ところがその地には全く違う金次郎像があった。大人の金次郎は、なんと身長180
センチ以上、体重も90sを超えていたのだ。
更に、金次郎は勤勉で有名だけど、革命的開拓者というあまり知られていない面がある。
次から次へと土地を開拓し、様々な制度を考案した立派な人物なのだ。ところが監督が
いろいろと調査をしているうちに、面白いものを見つけた。家計簿だ。夫人の化粧品の
値段から何から事細かく記してあり、几帳面と言うか何というか…案外ケチ?成功して
いる人のトイレをチェックし、何を食べたのか、食べ物から成功の秘訣を探っていたり、
癇癪持ちだったり…とても人間臭い面がある。だから面白くて映画になるのだ。
監督は「この映画の裏テーマは西部開拓史」と仰った。西部劇を撮るのだと。開拓をす
る百姓ヒーローがいて最強の敵である武士が現れる。ところがこの敵は金次郎の邪魔を
しようとする訳ではない。武士=公務員として自分の職を全うしようとしているだけな
のだ。現代社会にも通じるところがある。面白そうだし時代劇を益々応援したくなった。
『二宮金次郎』
監督:五十嵐匠
脚本 : 柏田道夫
出演 : 合田雅吏/田中美里/榎木孝明/柳沢慎吾