10/1のしゅちょう
            文は田島薫

(日本の食文化の豊かさ、について


先々週から1週間米国旅行して来てたんだけど、私が内外の旅行などでいつも困るの

は食事で、ふだん毎日、納得の行くバランスの好きな食事を作って食ってるのに、そ

れが全くできないことになるからで、好き嫌いがなくて、珍しいどんな料理でも食っ

てみたい、ってタイプの人だったらなんの苦もないんだろうけど。

私はふだん肉をほとんど食わないんでそのせいもあって、米国人がお昼に食う肉のハ

ンバーガーも旅行中1回しか食ってないんだけど、それにしても、ほとんどの部分が

パンでうす〜くスライスされたトマトやチーズやレタスかなんかや、オニオンの揚げ

たやつでさも料理らしく増量されてケチャップかけられて、けっきょくケチャップど

けて、パンをもそもそ食って、ポテトフライは残した。

ハンバーガ店の次の時は、フィッシュフライのマヨネーズぬきを頼んで、油こい衣を

剥いだら、しょぼい量の白身魚が残った。それでもでかいパンを食えば腹はいっぱい

になる、ってだけの食事なのだ。われわれはパンも残したけど。

で、次は総菜屋で、パンとグリルサーモンを買ったんだけど、そのサーモンの切り身

一切れが800円もする。もっともマンハッタンのレストランでその料理頼んだら数千

円取られちゃうことを考えれば、それでもまだ安いわけで。

けっきょく、高所得のニューヨーカー以外のふつうの庶民は、パンばっかりでかいハ

ンバーガーみたいなのばっかり食って腹を満たしてるせいだろう、街で肥満で体を重

そうに歩く老若男女があちこちどこにでもいた。

けっきょく、レストランで高額な魚や野菜の料理を好きなだけ注文するつもりのない

われわれは、スーパーなどで食材を仕入れて公園やホテルで食うのがメインになるん

だけど、そのスーパーで買うのに、トマトやバナナやヨーグルトやチーズ、といった

もんは手に入るものの、日本ではあらゆる種類の野菜が山積みだったりするとこに、

リンゴしかなかったり、日本ではあらゆる種類の魚がある缶詰なんかも、サーディン

1種類だけしか見かけなかったり、旅先の食バランスでわれわれが常用してて日本な

らどこにでも売られてる野菜ジュースもやっと缶入り1種類を2つの店で見つけた以外、

どんなでかいスーパーでもあるのは、甘いくだものジュースかそれとブレンドした野

菜ジュースもどきばかり、それも日本の4〜5倍の価格で。

多分、米国じゃ、野菜や色んな食材のタンパク質なんかでバランス取るなんてのは一

部のしゃれた連中だけがやってることで、そんなに売れない、ってことなんだろう。

商売で利益率の高い甘い水ばかりどこの店でも棚いっぱいに溢れて陳列されてて、米

国庶民はそれを飲むのも普通だと思って知らずに肥満になって行くんだろう。


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