やがてかなしき…
寝正月の予後がわるく、いつまでたっても体力というか気力がもどらない。
「この分では温泉へ行って湯治でもしなければだめかな」とつぶやいたとたんオカミサン
のアンテナがうごき、あっというまに温泉行が計画された。
これにはわけがある。毎年冬になると「温泉へ行って温かくすごしたいな」というのを聞
き流して「一人で行って来い」といっていた本人が、温泉に行きたいと言いだしたのだか
ら聞き流すわけがない。
行先は北関東の有名な温泉。しかも宿は一流ときている。しかし、行ってみておどろいた。
30年ぶりに訪ねるそこは、おもかげこそ残っていたが街並みはすっかりかわっていた。
軒をつらねた大きな宿が潰れていて建物がそのまま廃墟となっている。散歩の途中土地の
オバサンの話しを聞くとあそこも潰れたここも潰れたと有名な宿の名を聞かされ、いまで
は寂れる一方で小中学校もなくなってしまったということだ。泊まった宿も名前こそその
ままだが当時一泊2〜3万円した高級旅館も今回は一万円でおつりがくるほどのおちぶれ
ようだった。ロビーこそ往時の華やぎをたもっているが、部屋に入るとその零落ぶりがわ
かる。きれいな青畳とおもったのがビニール畳で、みごとな造作も手入れがわるく、傷ん
だり汚れたままになっている。人でも物でも落ちぶれた姿を見ることほど侘びしいことは
ない。
活力をつけに行ったはずなのに、どうやら逆効果だったようだ。なれないことはするもの
ではない。 |