一花開きて万魚滅す
めだかを飼っている睡蓮鉢のすいれんが咲いた。
いままで10株ほどおなじようにして植えたが、咲いたのは、およそ30年前のいちどだけ。
ホームセンターで売っているのはダメだと言いながら30年たってしまった。ことしは、も
しかすると肥料がたりないのではないかと、大量の化学肥料を埋め込んでみた。一週間ほど
すると葉がいきいきとしてきた。また数日たつとつぼみをもった。わが考え大成功と気をよ
くしていた。
つぼみが水面に出て、いよいよあと2〜3日で花が咲きそうになったある日、前日まで元気
に泳いでいた6匹のメダカが全滅していた。
これをみた老妻が「肥料が溶けだしたからでしょ。これじゃアウシュビッツじゃない、かわ
いそうなことをして…」と数日にわたって老生を責めつづけた。
しかし、この現象は科学的にみるとおかしい。たしかに化学肥料が溶け出せばメダカにいい
わけがない。化学肥料がいっぺんに溶けたのならわかるが、土の中から徐々に溶け出すのが
ふつうである。そうなれば弱いメダカから死んでいくはずだ。ある日いっせいに死ぬと言う
事は納得がいかない。
その日は特別に暑い日だった。水温が上がり酸欠になったのだろう。エアポンプも使ってい
ないし、水替えもまめにやっていない。いっせいに死んだことを考えると酸欠死が正しいと
思われる。この考えを老妻になんど話しても肥料虐殺説をひっこめないで論争は毎日平行線
をたどった。
ところが花が咲いてしまうと「メダカが肥料になったおかげね」とおだやかになり、やがて
論争をわすれたように花を愛でる日々になった。
表題の「一花開きて万魚枯る」は「一将功成りて万骨枯る」のパロディーである。
この言葉をほんらいの意味で考えると、石原、猪瀬、舛添の3都知事がピッタリだ。石原知
事は都政を放り出して国政に走り功を得た。猪瀬知事はオリンピック招聘までは功であった
が、自爆して枯れてしまった。舛添知事は、都民の税金を私ごとに使い放題使ったあげくに
都政をほうりなげた。この三人の中ではトップクラスの功成った将である。
さて、炎天下選挙遊説にはげむお三方はこうならずにすむかどうか。非都民としては毎日が
楽しい高みの見物である。 |