歩けないのもわるくない
芸大美術館のかえりに上野公園をぶらついた。
新緑につつまれた平日の公園は人出もほどほどで気持ちがいい。観光客にかぎって見れ
ば、外国人観光客とくに西欧系の人がふえたのをみると時代が変わったものだと思う。
視覚をせばめて見ると外国の公園にいるような気分にもなれる。
上野公園は文化の森ともよばれる。しかし、欧米でおなじような意味でよばれる公園は
もっと規模が大きい。上野の森はせまいところに文化芸術にかかわる施設がおおすぎる。
ざっと数えても12の施設が密集している。これでは公園というよりも各施設に付随し
た庭をあるいているようなものだ。
昔は、ちょっと歩くと隣の建物につきあたるという、なにがなんでもおいらの施設は上
野のお山、というさもしい根性でこりかたまった、せせこましい文化集落をにがにがし
く思っていた。ところがいま、不自由な足をひきずって歩いてみると、それらはなんと
も絶妙な距離感でならんでいる。広くもなく狭くもなくほどよい感じで公園を散策でき
ることに気がついた。歩行が不自由ということは不幸であるが、おなじものをちがった
角度で体験できるということを発見した。 |