10/20のねこさん 文は田島薫
追っかけっこ
晴れた週末の午後、家人と自転車で食料の買い出しの前に駅前の銀行やドラッグストア
へ行き、なだらかな丘を越え戻って来たところ、そこにある下駄の歯のように少しはな
れて立ってる2棟のアパートの手前の方の棟の前の路地の向こうから黒いねこさんが走
って来た。お、って思ってると、すぐにとらねこさんも走って来た。先に行ってる家人
が向こうでなにか言ってる。ねこさんたちは順次、アパート向かいの家の車が止まって
る向こうの庭の方へ走り込んだ。家人の方もねこさんたちを見た、って言ってるんで、
そっちへ行ってみると、そっちの棟の路地を奥へ走って行った、って言うから、さっき
と同じねこさんたちがぐるっとコの字に走ったようだ。ふたりで走り込んだ家まで戻り、
庭ん中見回したけど奥の物置きのようなとこの棚の箱ん中に別のねこさんがひとり寝て
るのが見えるだけだった。
こらっ、おまえだな、このごろ、おれんちの近くをうろついてるやつは、ばーろー、お
いっ、このっ、ネコパンチだっ、このっ、このっ、おっ、逃げるか〜、まて〜、おっ、
そっちはおれんちじゃね〜か〜、そっち、逃げんじゃね〜、っつーの、逃げんならそっ
ちじゃなくてあっちだっ、つーの。