1/11のねこさん 文は田島薫
枯れ草の空き地
茨城から帰って来た休日10日の陽の傾く頃、外はもうすっごく寒いんだけど、冷蔵庫が空
じゃ行かないわけにいかない、っつーことで自転車で食料の買い出しに行く途中、空き地
にしろねこさんが入って行くのが見えた。そこは、秋の終わりの頃、ねこさんが草にスリ
スリしてた場所で、一瞬また、それかな、って思ったんだけど、草はみんな枯れてるし、
じっとしてるだけでふるえがくるぐらいの空気の中、それはないか、って、じゃ、なんだ、
って、じっと見てると、ねこさんの方もこっちに気づいて、ちょっとにらんだ後、ちょっ
と奥の方の枯れ草のかげへ行って、尻を落とした。
や〜、さぶいね〜、がまんできないね〜、しっこしっこ、ぼくはねこなんだから、どこで
も好きなとこでしっこすればいいよーなもんなんだけど、やっぱ、ぼく専用のトイレでし
たいんだよね。あの草地を見つけたのは、ちょうど秋の頃だったんだけど、すげー暑い夏
が過ぎ、気持ちいい風に吹かれながら、草にスリスリすんのがこれまた気持ちよかったん
だよな〜、で、スリスリをたっぷり楽しんだ後、しっこしてから、のびをして、それから、
ちょっと毛づくろいをした後、帰って来たもんなんだ。でもこの頃はさみーね〜、草も枯
れちゃってるけど、スリスリやのびのびなんかやってる心の余裕、っつーもんはないね〜、
も〜、大急ぎで、行って、さっさとしっこして、とっとと帰って来なくちゃ。とゆーわけ
で、ととと、あれ、だれか見てるぞ、うっとーしーね〜、なんにも芸はしませんよー、ぼ
くに声をかけんじゃありませんよー、っだ。ほっとこほっとこ。