●連載
がたやま娘のひとりごと      文はこんのたえこ


地方文化都市山形で、世界の様々なことを感じ考えている
賢くうら若い(?)娘の話を聞こう、疲れたおじさんおばさんたちよ!

街が変わった。たえちゃんとこの被災報告シリーズの3だす。



被災地の隣にて その3

懐中電灯の電池がもったいないので、仏壇のロウソクも使った。でも余震が来たらす

ぐ消さなきゃならないので、あんまり意味がなかった。携帯も充電が半分しかなかっ

たので、電源を切った。親戚や友達へ連絡ができないので、まずはとにかく無事を信

じることしかできなかった。


真っ暗な中、厚着をして毛布にくるまって横になったが、当然眠れない。すぐ外に逃

げられるように、窓を開けいていたので、とにかく寒い。ラジオでは、時間が経つに

つれ、避難所の人数も増えていた。余震が来るたびに、飛び起きていた。そのうち、

津波で大きな被害が出たというニュースに耳を疑った。まったく信じられなかった。

そんなことがあるのかと、呆然とした。


私は今どこにいて、何をしているんだろう?と思った。今朝までのことが、夢のよう

だった。いつも楽しいはずの週末が、どうして違ったことになっちゃったんだろう?

でも、こうなった原因に、誰も悪い人なんていないのだ。誰のせいにもできないし、

誰の責任でもない。現実なのだ。今こうやっていることが、現実なのだな、と思った。

しかし今からどうなってしまうんだろう?暗がりの中とラジオの情報では、何も想像

できなかった。とにかく最悪のことも考えて、どうやって一週間食べていこうかと、

それだけを心配していた。


ガチガチの体で横たわり、一晩中ラジオをつけているうちに、外が明るくなってきた

ので、少し気が楽になった。大きな余震もあったけど、一晩、生きていることができ

たのだ。


わたるの散歩がてら、夫と共に外の様子を見に行った。

道をすれ違う人、まったく知らない人だったけど、お互いに軽く会釈をした。同じ気

持ちだったのだと思う。全然知らない、親子連れの、小さい子供が「あ、ワンワン!

ワンワン!」と普段と同じように、無邪気に言うのが微笑ましかった。親御さんたち

と笑い合った。


一番近くの避難所は、人数も少なかったし静まり返っていた。

駅前通りに出たけど、車は少なかった。同じように様子を見に来ているような人がけ

っこういたように思う。いろんな駐車場のゲート、外したり、壊されていたり、開放

したままのところなど、いろいろだった。コンビニはどこも開いていなかった。ガラ

スが割れていたり、建物が損傷したりしたようなところは無かったようだったけど、

私は高い建物に近づくのがとても怖かった。


見慣れた街なんだけど、全体的に静かな街になっていた。


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