7/25のねこさん 文は田島薫
チビクロがかどを曲がった
先週の朝、燃えるゴミを置き場に置いて帰って来たところ、歩いて行く小さいくろの尻が
見え、わが家の手前にある小さな袋小路へ曲がって行った。
その袋小路の前まで行ってそっちを見ると、くろは5〜6メートル先まで行ってたんだけど、
前に一度見かけたことあったけかな?ってぐらいのおなじみじゃないねこさんで、声かけ
るとふり返ってこっちを見てる。ためしにしゃがんで手招きしてみたら、なにか考えてか
らその場に後ろ足だけ曲げて座った。しばらく手招き続けてたら、そばの家の庭にいたお
っさんがくろに気がつきそっちを向いてなんか言った。そっちを見てからまた私の方見た
くろは間もなく立ち上がり向こう向いて歩き出し、つきあたりの門扉の下をひょいとくぐ
ってからそこの家の庭先を左に曲って消えた。
このあたりはどのあたりなんだろう、いつもぼくがいたあたりとはちがうね〜。なんだか
どんどん歩いちゃうのが好きなもんでいつも知らない場所に来ちゃうんだよな。ま、ずっ
と1日じゅう歩き回ってるうちにはたいていいつものあたりに帰って来れてるから平気だ
けどね、ま、帰るいつものあたりつったって、ぼくんちがある、つーわけでもないんだけ
どなんとなく元から長くいたとこなもんで、どっか安心な感じがすんだよね。エサくれる
人も少しいるし、でも、このあたりみたいに、知らないとこだと、何があるかわかんない
から不安なんだよな。ほら、後ろから怪しい声がするだろ。はい?なんでっか?あれ?し
ゃがんでるぞ、あんだって?こっちへ来い、ってか?まいったね〜、知らない人んとこへ、
はいそーですか、って行くわけないでしょ。ま、せっかく声かけてくれてるしそんなにわ
るい人でもなさそうだから、座ってちょっとだけつきあってやっか。あれ?今度は別の声
がなんだかぼくを叱ってるようだね。やれやれ、じゃ、ぼくはもう行くね。