きょうのしゅちょう 文は田島薫
(貧乏くささについて)
貧乏くささと貧乏は違う。貧乏くさい、って言うのは、当人が貧乏を嫌悪してて、な
んとか金持ちらしくしたい、ってがんばる時の隙間だ。
貧乏をそのまま善しとしてるものは、堂々としててちっとも貧乏くさくなんかなくて、
なんだ筋金入りの貧乏、ってのはこういうもんか、って妙に説得力がある。
だったら、貧乏を嫌悪しててなんとかそこから脱したいってがんばってる人間がダメ
で、私は貧乏ですよそれでけっこう、って開き直った方の人間の方がエライのか、っ
て言うとそんなことは全然ない。前者の方がその分野についての向上心があるとも言
えるわけで、そうしたいならそうやって、いつも背伸びしてがんばればいいだろう。
そのうちに貧乏くささから本物の金持ちになる可能性も後者よりあるだろうから。
今ここで、言ってることはただ、貧乏くさい、ってちょっとマイナスイメージの成り
立ちについて言ってみただけのことだ。
ここで、表現を簡潔にするために、貧乏くさい人のことを仮に、BKM(ビンボクサ
マン)と呼ぶことにしよう、
まず、BKMは、居間が6畳ぐらいなのに、けっこう豪華に見えるフェイクレザーの
応接セットをでんと入れたがり、まさかのシャンデリアをつける者もいたり、新築の
時に玄関やドアはできるだけ重厚な感じにしたがるわりに、建て坪はひどく狭い。
で、家具なんかはできるだけ木目の豪華そうなもんを選ぶんだけど、ベニアの上に木
目プリントでも、値段が見た目より安いと大喜びで採用。
で、車はできるだけ高級そうに見えるセダンを3〜4年ごとに買い替えるんだけど、
シートのビニールカバーは決してはずさない。
次に、BKMは子供の学歴に非常にこだわり、場合によっちゃ、コネでも裏口入学でも
なんでもいいから、なんとか見栄えのいいとこに入れようと汗だくで奔走する。
さらに、BKMは、会社の肩書きにこだわり、定年で退職した後でも、それが大手企業
だったりすると、元どこどこ会社部長などと肩書き付きの名刺をつくって配り歩く。
などと言っても、BKMの方々はエライっ!あんたこそが今の日本の繁栄を作ったのだ。
戻る