10/12のねこさん 文は田島薫
ひとり好きうまちゃん
暑い夏も終わり、気持ちいい季節になったもんで、うまちゃんの活動も活発化しだした。
つっても、うまちゃん、ひとりぼっちで自分ちの周囲を歩き回ったり走ったり立ち止まっ
たり座って休んでたりしてるだけなんだけど。先日は家人に、うまちゃんだ、って呼ばれ、
2櫂の裏の窓から外見ると、奥の家のフェンスの向こうを彼が歩いてて、視線に気がつい
たのかこっち見て立ち止まってるんで、ふたりで手を振ったし、別の日には、玄関前に座
ってるとこ見つけたもんで、しばらく見つめ合ってから、一歩足を前に出したら、ととと
と奥のドアのところまで後ずさりして座り直したし、さらに別な日には、道路歩いてると
こ見つけ近づいたら、ととととそばのアパートの水道タンクの下へかくれたし。
や〜、ぼか〜、ひとりで走り回ったりすんの好きなんだね〜、これが自由っつーもんなん
だろーね〜、どこでも行きたいとこへ歩いたり走ったりして行けるし、疲れたらどこで休
んでもいいわけだし。でも、そんな気分にじゃまが入る時があんだよな〜、特にとなりの
あの人、ぼく見ると声かけてくんだよな〜、ほっといてくれ、ぼくはきみとは話しする気
も頭なでさす気もないんだから、人の生活スタイルにかかわってこようとしないでくれた
まえ、きみはきみの生活スタイルだけを楽しみたまえ、って言ってやりたいんだ。ま、遠
くからぼくを見てる分には、ちょっとつきあってやってもいんだけど、近づいちゃ、だめ、
おっとっと、まあいをまもれ〜!、まあい、まあい、まあいいか、…じゃなくて、まあい。