3/15のねこさん 文は田島薫
うまちゃんと通行人
きのうの昼ごろ、2階のベランダから外見たら、となりのバレエ教室のフェンスの下
にあるコンクリの土台のわきに小さくて黒っぽい雑巾のようなねこさんがうずくまっ
てるもんで、あれ、新人かな?、ってよく見てみると、うまちゃんだった。
うまちゃんじゃないように見えたのは、いつもより身体をちぢこまらせて、なんだか
心細そうな顔をしてるせいのようだった。
見てると、うまちゃん、前の道路を3〜4人の団体がばらばらの隊列でやって来るも
んで、あわててわきによけて、通り過ぎるのを見送ってる、ってことのようだ。
それが通り過ぎたのを見計らってから、うまちゃん、ゆっくり道路を渡り、向かいに
ある家の塀に飛び上がってから向こう側へ消えた。
や〜、気持ちいい天気だね〜、道路のアスファルトもあたたかいし、散歩散歩、って、
のんびりしてると、あっちからなんだか騒がしい人間の団体が来るぞ、やばい、わき
へよけて、と、なるべく目立たないように身体をぎゅっ、とまるめて、あんな団体が
ねこ好きだったらかなわないからな〜、ま、呼びかけられたら逃げちゃうだけなんだ
けど、性格のわるいやつだ、ってあんまり思われたくもないし、逃げ方に気を使っち
ゃって疲れちゃうんだよな。どうかぼくに気がつかないように、となりの家の人のよ
うに、ぼくに声かけないように、ぼくは、きみたちには見えない見えない。や、よか
った〜、自分たちの話に夢中でこっちに気がつかなかったようだ。となりの家の人も
もっと話相手がいればよかったのにね。