9/28のねこさん 文は田島薫
かべねこ
土曜は茨城の家を遅い朝出て昼過ぎにはさいたま市の最寄り駅に着き、駅の立ち食いそば
を食ってから、家までの道を家人とでかいバッグやギターケース持って歩いた。
ほぼ2ヶ月ぶりの道を沿道の家の植木などの微妙な季節の変化を確認しながら歩いてると、
なだらかな坂の途中にある、家はふつうの大きさなのに、塀回りだけ、きちんとした様式
で作ったと思われる木戸のついた門と丈は低いんだけどきれいに手入れされた生け垣でい
つも感心するその生け垣んとこへ来た。
何の葉かわかんないし、どう変化したかもわかんないまま(なんだいなんにもわかんねー
んじゃねーか)、う〜んミドリイロだな〜、って確認してたら、一部に明るいチャイロが
ある。ありゃ、なんだ、って思う間もなく、生け垣のちょうどうまくすき間があいたとこ
にねこさんの背中がくっついて生け垣と同化してるのがわかった。
家人が、ねこちゃんねこちゃん、などと呼びかけると、ゆっくりと身体を回転して生け垣
の一部が今度はねこさんの不機嫌そうな大きめの顔で見事に埋まった。
この垣根のちょっと穴あいたとこ寄りかかって寝ると気持い〜んだよな〜、きょうみたい
に秋なのに暑い日なんか、葉っぱのクッションと背中をなでる風がちょうどいい涼しさだ
し、ぼか〜、ここをこんどからは、秘密の寝床、と呼ぼー、って、思ってるそばから、だ
れかがぼくに呼びかけてるぞ、ったくも〜、秘密の寝床なのにそんなすぐそばから声かけ
られちゃ、どこが秘密なんだ、ってみんなに責められちゃうじゃないか。だれだ〜、ぼく
の秘密の寝床をじゃまするのは。よいしょ、って穴に顔をはめて、と。お、なんだかふた
りでぼく見て笑ってるぞ。シッケーだな。ぼくのなにが可笑しいっていうんだ。場合によ
ったら怒るぞ、怒ったらおまえらなんかやっつけちゃうんだかんな。でも、万が一、そっ
ちが反撃して来ても大丈夫、生け垣があるから安心なんだ。安心してにらんじゃおー。