11/9のねこさん 文は田島薫
あさのくうき
今朝は、これからいい天気の一日が始まるよー、ってだれかが言ってるようなさわやかな
感じだったんで、思わず外へ出てしまったら、となりのバレエ教室の玄関前に止まってる
小型自動車の屋根にうまちゃんが座ってる逆光のシルエットが見えた。
うまちゃん、このごろその場所を気に入ったようでよくそこに乗ってるのを見かけるんだ
けどこんな朝早くから座ってるの見たのは初めてだった。
朝の空気がそばのかきねに植わったいろいろな花や葉をつつみ、うまちゃんも気持よさそ
うに、ゆっくりあたりを見回したり、目を細めたりしている。
昼間の日なたぼっこにもいいんだけど、まだみんなが出て来たりしないこの時間にここ座
ってると気分サイコーなんだよな、お花さんもみずみずしいし、空気もおいしいし。だれ
にもじゃまされないで、もーぼくが世界をひとりじめちゃってるような気分でさ、…って、
思ってるそばから、おいおい、なんだかいつもぼくにちょっかい出すとなりの人が出て来
ちゃったよー、ありゃ、こっち見て笑ってやがる。こら!おまえは出て来なくていいんだ、
家ん中入ってて新聞でも読んで考え込んでりゃいいんだ。今はぼくと大自然との交流って
いう大切な時間なんだかんな。いーや、もー、無視しちゃおう。向こうに立ってるのは、
ただの枯れ木ただの枯れ木。気をとりなおして、う〜ん、あれ、上で何か音がするな、だ
れだ、ぼくのじゃまするおまえは?ん、ひこうきか。しょーがないな〜、そろそろ世間が
にぎやかになってきたようだぞ。