3/30のねこさん 文は田島薫
あなほるねこさん
土曜の午後、いつものように自転車で食料の買い出しに出かけた帰り、ねこよこちょう
にある1軒の家の庭に黄色いねこさんがのっそりと入って行ったのが見えたんで、そば
まで行き、自転車止めて眺めた。
その庭は小さな植木が間を開けて気まぐれに何本も植わってて、ねこさん、その1本の
根元来ると、せっせ、せっせ、って穴をほりだした。
なんか宝物でも隠してあったやつを掘り出してんじゃないか、って見えるほど、その箇
所に確信を持ってる風なんで、ほー、って思い始めた時、ぴたっと動きが止まった。
お、っけっこう浅いとこに宝物埋めといたか〜、って思う間もなく、どういうわけか、
その今掘った穴の上にまたがり、腰を下げた、で、こっちの視線に気がついたらしく、
ふり帰ると、なんだよ〜、って顔をした。どういうわけかじゃないだろう、しっこをし
てるだけじゃないか。
用が済むとそこから身をずらし、今度は掘ったばかりの穴にせっせ、せっせと土戻して
から、行くのかなと思ってると2、3歩歩いてから、すぐとなりの植木の根元を、また、
せっせ、せっせと掘り出した。今度こそ宝物か、って思ってると、ぴたっ、と動きが止
まり、またまたがった、どういうわけだ、って思ってると、ふり返り、また、だから、
なんなんだよ〜、って顔して、今度は、んこ。ぽとっ、ぽとぽっと、って丸見え。
で、っやっぱり、用が済むとせっせ、せっせと土かぶせてから、またこっちふり返り、
もう一度なんなんだよ〜、って顔で言ってから、前を向き、身を低くして、さっき入っ
て来た時と全然ちがうスピードで、とととととと、って逃げ去って行ったもんで、思わ
ず私は、こらー、んこして逃げんじゃない、って叫びそうになった。