6/22のねこさん 文は田島薫
ふかふかベッド
土曜の晴れた午後、自転車で図書館に行く途中、その通りに出る手前の家に手入れの行き
届いた日本庭園風の小さな庭があり、垣根越しに白地に茶色の小さなねこさんがいた。
垣根のすぐ向こうに小さな松を植えたふっくらした土盛りがあり、あたりの熱気がそこだ
けひんやりしてて、一番気持よさそうな上にそのねこさんが向こう向きに寝そべってる。
足も手ものんびりと投げ出しちゃって、や〜、いい気持だね〜、寝るより楽はなかりけり
だね〜、浮き世のカバは起きてはたらく〜、だね〜、って背中が言ってる。
私も、彼のじゃまにならないように気をつけながら自転車をゆっくり近づけながらながめ
てたんだけど、さすがはねこさん、背中で気配を感じとってふり返った。
なんだこの人は、せっかくのんびりくつろいで寝ころんでたのに、そんな風に近くに来ら
れちゃ落ち着かないじゃないか、第一、ぼくの寝てるの見ててなにがおもしろいんだろう、
何かわるい魂胆でもあんじゃないだろうな、っていきなりぼくの心が波立つこの忙しさ、
この気持いいベッドがだいなしじゃないか、いよいよとなったら、ぼくは立ち上がるんだ
かんな、いつまでも寝てると思うなよ、ってその姿勢のままじっと私の顔を見てる。
私の方もわるいとは思いながら、くつろいでいながら少し困ったような顔がおもしろくて
しばらくながめてると、ねこさん、いつまでこっち見てるつもりなんだい、いよいよとな
ったらぼくは立ち上がるんだかんな、立ち上がってから逃げるんだけど、でも、ベッドが
気持いいから、そのへんの判断はもうちょっとぎりぎりのとこまで待ってみよう、って目
が言ってるんで、私は、だいじゃぶだいじゃぶ、って目で合図してからその場を離れた。