12/28のねこさん 文は田島薫
駆け下りるねこさん
先週、駅へ向かう途中の一番の急坂を家人とえっちらおっちら上ってると、坂の頂上か
ら白い小柄なねこさんが駆け下りて来た。
おい、ってふたりで言って見てると、以前、別なゆるやかな坂を私が自転車で下ろうと
してる時に向こうから走って来た別のねこさんに声かけたら、そのねこさん立ち止まっ
たのに、今度のねこさん立ち止まりも見向きもせずに少しはなれたわれわれの左側を抜
けて行って、坂の途中にある家の駐車スペースの車の後ろへ入った。その後ろにあるコ
ンクリの階段上って行くのかな、ってわれわれはちょっとななめに坂下って、そっちな
がめてみたが、車の後ろでストップしてる模様。
この坂、急だからぼくは走りたくないんだけど、人が向こうから来ると思わず走っちゃ
うんだよな、走っちゃうと急に止まるのが難しくなっちゃって、時々でんぐりがえしみ
たいに止まっちゃ、人に笑われちゃったりした あげく、からかわれたりするもんで、
もしも、向こうの人が自転車かなんかで下ってて、ぼくが逆に上ってるんだったら、相
手はじきに下りちゃうはずだし、ぼくの方といえば、ひと休みするのもわるくない、っ
てわけで、立ち止まるのもやぶさかではないんだけど、今回のような場合は呼びかけら
れても止まらないようにしてるんだ、ありゃ、呼びかけられちゃった。社交的なぼくと
しては止まってあげたいんだけど、気がつかなかったことにして、やー、走ることに熱
中してるぼくは、何にも聞こえないんだよ〜、って顔して、と、ここ曲って、車の後ろ
に滑り込み。おっとっと、少しよろけちゃったな〜。でも、見られてないよな。ちょっ
とほとぼりがさめるまで、ここでじっとしてよー。もー行ったかな、あの人たち。