12/7のねこさん 文は田島薫
重いからだ
先週末、トランジスタラジオの修理たのみに第2の最寄り駅の方へ行って帰って来た時、
けっこう最近、思い思いのしゃれたデザインの新しい住宅が建ち並んだ所の中にあって
一番さえないデザインの工場風の建物のゴチャゴチャっとした玄関というかちょっとへ
こんだスペースの一番手前の道路際に身体の下半身がボテっと大きくたるんだ白地に薄
茶柄のねこさんがいるのと目が合い、自転車を止めて、じっとながめたら、ねこさんも
困ったようにじっとこっち見ながら固まっている。
だもんで、こっちもず〜〜っとじ〜〜っと見てるとねこさんもズ〜〜ットじ〜〜っと見
てるもんで、もっとじ〜〜〜っと見てると、道路の向こうから運送の軽自動車がやって
来たもんで、一瞬ねこさんと目をそらして、道路わきに自転車移動しながらねこさんの
方に目を戻したら、奥へ逃げて行くとこだった。
で、それをじっと目で追うと、ねこさん奥にある鉄骨の階段のすき間から顔出して、ま
たこっちをじっと見てるんだけど、少し安心した表情の様子。
心配性のぼくはこの冬の準備で秋ごろから食べられるもんならなんでも腹いっぱい食べ
るようにしてたら、知らないうちにすごいデブになっちゃたようで、道歩くのがしんど
くて、いつも途中のこのちょっとへこんだ場所でひと休みすることにしてんだけど、あ
れ、だれかがぼくのこんな真ん前で立ち止まってぼくを見てるぞ、やばい、三味線やだ、
ぼくのこの豊かな身体見て皮をたくさん取れるぞ、ってねらってるんだ、ぱっと逃げな
くちゃいけない時なのに、身体が重くて、うんこらしょ、ってやってるまにつかまっち
ゃうに違いない、よし、こーなったら、すきを見せないよーに、にらんじゃおー、つっ
ても困った気持が目に出ちゃってるよーで、どーしたらいーんだ、ぼくの皮は使えませ
んよー、伸び切っちゃってるんだから、だらしない音の三味線なっちゃいますよー、っ
て言ってるまに救いの神さまだ、今のうち、どっこいしょ、とっとっとっと。と、ふー、
あぶなかった、ここまで来ればもーぼくのことは見えないはずだ。よかったよかった。