8/31のねこさん 文は田島薫
くろねたねこさん
先週はねこさん、やっとおふくろの病院で見つけたしろねこさんのことを書いたんだけど、
おふくろは土曜に退院しちゃったし、さていよいよねこさんねた困った、って思ってたら、
きのう、滞在してる両親ちの庭にねこさんが来た。
廊下に面したおやじ手作りのひょうたん池のまん中のセメントで固めた小さな橋の上にグ
レーのほとんどくろに近い色の毛のねこさんがゆっくり歩いてたのを、家人がまず見つけ
て声を上げたんで廊下の網戸ごしにふたりで眺めた。
気がついたくろねこさん、ふり返って立ち止まり、ふり返ったまま、やおら腰をおとすと
ちょっと不自然なかたちに横になり足を自分の足に重ねて、くつろいでるポーズ、みたい
なかっこしてから、また立ち上がり、ゆっくり、また歩き出して、庭の向こうの安普請の
空家の別棟のベランダに続く外階段を上って行った。
両親に聞くとくろねこさん、けっこう前から時たま来てるらしいんで、池の金魚をねらっ
てるのかな?、って言ってみると、おやじの方は、それにまちがいない、って言い、いつ
も追い出しをかけてるらしいんだけど、首輪してるし、あの落ち着きぶりだと、そんなこ
んたんなんかないねこさんなんだろう。
そうなんだ、ぼくはただジャングルみたいな庭や池の風情が好きで散歩に来てるだけなの
に、あそこのいじわるじいさんがぼくを目のかたきみたいに追い払うもんだから、その誤
解をとこうといつもがんばってるんだ。お、じいさんの家族らしいのがこっち見てるぞ、
よっこらしょ、や〜くつろぐね〜、ぼくは、あれ、なんだか姿勢に無理あったみたいだな、
そうか足上げたかたちのままふり返ってるもんで、背中のすじ違えちゃってるんだな、い
かんこのまま無理すっと、ずっとこの橋の上で寝たきりになっちゃうかもしれない。どっ
こいしょと、立ってと、ゆっくり散歩楽しんでるね〜ぼくは。ここの階段も上ってと、で、
上からの眺めも楽しんじゃうんだね〜、ぼくは。 ね、ね? わかった? ね、ね?