3/26ののらねこ 文は田島薫
歌うブラッキー
もう完全なぽかぽかの春陽気だもんで、ねこさんたちも、どっか行楽にでも出か
けたようで、あんまり姿見ないんだけど、となりのベランダ見ると、たいていは、
いつもブラッキーが寝てる。
で、外で春の歌声がするんで、出てみると、いつもブラッキーがひとりで歌って
るのが見えて、こっちが見てるのに気づくと、しらばっくれたように、歌うのや
めるんだけど、きょうの午後も歌声が聞こえたんで、出てみると、下の二階から
続くねこけもの道の中途を歩きながら彼が歌ってる。
ブラッキーは改名(私による)前、きたなくろ(私による)、って呼ばれてて、
表面の黒い毛の中が白っぽい毛なもんで、全体がなんとなく薄汚れた感じに見え
るから、ご婦人方にはあまりもてないんだろう、いつもひとりだ。(うるさいっ、
大きなお世話だっ。…ブラッキー怒)、しかし、きょうはガールハントに出かけ
る気配。
私は路地の見回りに彼と逆方向の階段を下りて行った。
北側の小さな庭の家の庭にバットマン3せが眠そうにまるくなっていた。
南側の陽の当る駐車場の車のバンパーの下にチャとグレーのカップルが仲良さそ
うにくっついて寝転んでいた。
やっぱり晴天のこんな日はねこさんたちもカップルでお出かけなんだろう、って
思いながら、事務所に戻って、階段上って行きながらとなりのベランダ見たら、
さっき歌いながらガールハントに出かけたはずのブラッキーがもう戻っていて、
ふられて来たんだろう、なんだか寂し気な目をこっちに向けるのであった。
(うるさいっ。…ブラッキー怒)