3/19ののらねこ 文は田島薫
火事の日のねこさん
朝1にバットマンが来たんで、ブラシングしてやったら、一瞬だけおとなしくし
てからすぐにエサの方へ行った。
午後1に酒屋に行くついでに路地の見回りに行ったら、北側の路地の中程の方で
青い制服を着た男たちと近所のご婦人方らしいのが立って、向かいの方をながめ
ていたんで、私もそっちを見てみたら、モルタルアパートの玄関がこわされて、
前に生焼けで水をかけられた家具のような物が山積みにされていて、どうも小火
があったようだった。
2軒ほど手前の小さな庭の家はどうだったかな、って思い出して、戻ってみると、
庭にはだれもいないんで、あたりを見回してみると、となりの家の外壁に取り付
けられていた室外湯沸かし機らしきものの上にくろとらが乗って、近所で騒いで
るよーだけど、ぼくにゃー関係ないっすよ、って顔で寝ていた。
帰って来ると、どうも頭の上が騒がしいんで見上げてみると、晴れた青空のすぐ
近くをヘリコプターが5機ばかり旋回してるんで、なんだろうな、思いながら、
階段上がって行ったら、バットマン2せが慌てて下りて来て、2階の踊り場から、
物置きの屋根をつたい、ねこけもの道の先まで逃げて行ってから振り返り、こっ
ちを見てるもんで、手招きしたんだけど、ちょっと考えてから、やっぱり逃げる
ことに決めたらしく、向こうへ飛び下りて姿を消した。
事務所に入ると、すぐに屋上にいたらしいシャンさんが、神楽坂で大火事だ、っ
て言って、煙りが見える、って言うんで、また火事か〜、って私も屋上に上がり、
向こうを見ると、けっこう大きな白煙が上がってるのが見えたんだけど、どうも、
それを見物してるねこさんはこの近所にはいない模様。