1/15ののらねこ 文は田島薫
だるまさんがころんだ
朝、皿は空なんだけど、あちこちにかりかりえさのつぶが散らかっていた。
いつもなら、皿はなめたようにピカピカになって、あたりにつぶが残ってる、って
ことはないのに、多分、正月が終わりエサが豊富に感じられて、ねこさんたちにも
エサ残して平気な心の余裕ができたのだろう。(残すんじゃないっ)
シャンさんが出勤して来て、下でバットマンに会った、って言った他は、お客さん
やってくる気配がなかったんだけど、外でねこさんのなにか訴えるようなねばっこ
い声が聞こえたんでドアの外へ出てあたりを見回したけど、当人の姿は発見できず、
となりの物置きの屋根でひなたぼっこしてたブラッキーがこっちをじっと見てるの
と目が合っただけだったんで、エサあるよ、って彼に一応手招きしておいた。
路地の見回りに行くと、北側の路地にはだれもいず、南の方は、陽がさすどっかの
小さな会社の入口の中に後ろ向きのしろくろぶちがいて、見てたけど、一度も振り
返らなくて、背中のお日さまがぽかぽかしてるのに満足してる模様。
そこを離れて、右手を見るとそこの青空駐車場に中肉中背のチャが歩いていたので、
見てると、こっちに気がついて、だるまさんがころんだっ、ちょうど上げた右前足
をそのままにして、ぎょ、って顔で、体の動きが止まった。
しばらく見つめ合ってると、自分が鬼ごっこやってるわけじゃなかった、ってこと
にやっと気がついたのか、ふいに走り出して、ずーっと奥の方のどっかの家の敷地
の中に消えた。