2/19ののらねこ 文は田島薫
不思議な行動
気持よく晴れた今朝、駅から事務所までの短い出勤途中の路地、小さな植え込み
のある古い家の玄関の前にスニーカーが何足か干してあって、ちょうど、そこへ
やって来たつーとん2せがそのスニーカーの上に座り込んだところが目に入った。
見てると、こりゃ、地面に直より快適だ〜、って喜んでる風情で、彼が目を細め
たところ、彼の目の端に自分を見てる人が見えたらしく、こっちを見上げ、少し
ばつの悪そうな顔をしてから、やおら立ち上がり、2、3歩歩いて、そばにあった
ヤツデの茎に落ちないで残っていたカラカラに枯れた葉に顔を押し当てて、上下
左右に顔を動かしている。
何やってるのかな?、ってじっと見つめていたんだけど、なかなかやめずに同じ
作業を続けてから、ちらっとこっちを見て、何かあきらめたように、枯れ葉から
離れ、フェンスの私のすぐ左手をくぐり抜け、私が見えないかのような態度で、
向こうを向いてゆっくり歩いて行った。どんどんゆっくり歩いて行った。
私はじっとそれを目で追っていたんだけど、どーもそれを意識してんじゃないか
って感じたんだけど、やっぱりどんどんゆっくり歩いて行き、行き止まりの手前
でやっと、右手に身を隠した。
身を隠した彼が、やれやれ、こっちの魂胆すっかり見すかされちゃったな〜、っ
て、言ってるのが聞こえたような気がした。