2/5ののらねこ 文は田島薫
オトコのプライド
最近また2階のベランダでうちよりいいエサ出しを再開したらしくて、あんまりお
客さん3階のココア食堂まで来ないんだけど、めずらしくきょうは出すとすぐにだ
れかが食べに来て帰ったようだったんで、2階見てみると、きょうはエサ出し休ん
でるようで、どうもあっちは気まぐれ食堂のようだ。
酒屋へ行くついでに路地の見回りに行ってみると、北側にはだれもいなくて、南側
に行ってみると、あっちをうすちゃが歩いているんで、そば寄って行くと、こっち
に気がついて慌てて早足で道の向こう側に逃げて行って、青空駐車場の塀のかげに
隠れた。で、塀の方へ行って塀越しに駐車場の中を見るとうすちゃはどっかの車の
タイヤに顔をこすりつけてる。で、それを見てると、こっちに気がついた彼はまた
慌てて向こうの方へ小走りに逃げて行った。
で、あきらめて、反対側の寒椿の植え込みの下にまだらくろが座ってるんで、それ
をながめてると、どっかからさっきのうすちゃが戻って来て、どんどんまだらくろ
の方へ近づいて来るんで、どーすんのかな、ってながめてると、ぴったりそばまで
来てまだらくろに顔をくっつけて親し気に何か言ったら、なんだかまだらくろは、
ちょっと迷惑そうな顔して体かわして木の後ろの方へ逃げてしまった。で、あ、な
んだ、まだらくろは彼がいやなんだな、って思ってるとあんまり遠くまで逃げずに、
またちょっとうすちゃに近づいて少しだけしか離れてない場所で座り込んだ。で、
見るとまだらくろの腹が膨らんでいる。うすちゃはなにも気にする様子もなく、く
つろいだ表情で座り込んでいる。こっちはずっとながめてるもんで、うすちゃも
こっちに気がついたんだけど、今度は慌てて逃げることをせず、平気を装って、じ
っと座っているのであった。