10/3ののらねこ 文は田島薫
いっぱいいっぱいのアクション朝出勤して3階のベランダから下を見ると、となりの建物のベランダでバットマン
がまるまって手足を顔の前に集めて寝ていた。
事務所のドア横のエサ皿にはだれもお客さんは来そうもないし、バットマンだけ
がこのコラムの頼りの材料だ、ってじっと見てみるが、ただ寝てるだけで、何も
起きそうもない。
仕方ないので、銀行行くついでにまた見回りしてねこさん探そう、って思って、路地歩いてくと、バットマンに似たねこが、垣根の向こうで、石のミニチュア池
みたいなものにたまった水を飲んでいた。
バットマンと違うのは鼻の下にバットマンにはあるヒゲがないことだった。
見てたら、ジロ、ってこっちを見ただけで、また飲み始めた。
それっきり、特に何も起きそうにないので、歩いて行きひと回りしたけど、他には
ねこさんに会わずに帰って来た。
また、事務所のあるビルの外階段を上って、途中でとなりのベランダのバットマンを見たら、やっぱり、さっきと同じ姿勢で寝てるだけだったけど、何かやってくれ
ないか、ってじっと見てたら、お、手足をケイレンさせてくれた。
お、おもしろい、って見てたら、それを何度もやってくれた。
彼も寝ながら夢の中で自分はだれかに動くことを期待されてるような気がして、精
一杯それに無意識で応えていたのかも知れない。