9/27ののらねこ 文は田島薫
新人慣れて行くきょうは先週と、うって変わって肌寒い上に雨も降り続いている。
朝、階段を上がって事務所の前まで来ると、若い新人らしいくろとらが
ベランダの広くなってる方へ早歩きして行くところが見えた。
エサ皿を見ると真っ白にきれいな空のままだった。
エサ食べに来たら空なんでよわっちゃったなー、って言ってたとこのようだ。
案の定、朝1のシャンさんは外出していてドアにカギがかかっていた。
ベランダの屋根のないところで、雨に打たれてこっちをじっと見てる彼はやっぱり丸顔の新人で、前にいた若とらと何度か見間違えていたことに、
気がついた。
こっちが知り合いって態度なもんで、慣れるのも早かったのかも知れない。
そんなとこにいないでこっち来な、今エサ出すから、って言いながらドア
開けて、そばのエサ袋を出していると、ととと、と階段を下りて行きそうに
なったので、ほらほらエサエサ、って言いながら呼び止めたら、階段の途中で
立ち止まって、こっちを見ている。
上がって来なよー、って言ってエサ皿に盛ってやったけど、階段の裏側に隠れ
てじっとしてるようなので、エサちゃんと出しといた旨を伝えてひっこんだ。
しばらく経って、シャンさんが帰って来て、くろいとらが来てたでしょ、って言ったので、あれ?知ってるんですか、って聞くと、彼が出かける時に階段で
すれ違ったんだ、って言った。
あれ?シャンさん顔なじみ?って聞くと、そう、すれ違うとわきに寄って、
彼はいつも道をゆずってくれるんだ、って。
だから、出かけるシャンさんが帰って来てエサ出してくれるのを、そん時から、
上で待ってたんだろう、ってことのようだった。
皿を見ると、ちゃんとエサを食べた跡があった。