3/8ののらねこ 文は田島薫
おぼっちゃんだったバットマンきょうは、春だね〜、って感じの天気で、事務所のドアの向いの建物のベランダでは、
めずらしく若白がひなたぼっこで寝そべっている。
おおい、上がって来いよ、って手招きしたけど、眠そうな目で、何でよ〜、って
こっちを見てるだけで動く気は全然ないようだ。
先週部屋で仕事をしてると、となりの部屋からこらーっ、って思いきりの大声が響いた。何事かと行ってみたら、前にも何度かあったように窓からバットマンが入って来そうに
なったのを、初めて見たシャンさんが驚いて叫んだらしい。
そんなにおおげさに怒るこたーないじゃないか、と思い彼にそう伝えたら少しテレていた。
バットマンの方もびっくりしたらしく、窓の手前の細い棚状の部分に置かれてたミニチュア
のコーヒーカップを蹴飛ばして逃げた。
翌日下の道路でのんびりしているバットマンに会ったので、いつものように、鼻をさわろうと思ったら、後ずさりしてさわらせないでどんどんすみっこの方へ逃げて行く。
いつもは全然気にしないで寝転がったりして見せたりもしてたのに、前日の経験で気弱に
なったようだ。
バットマンは若さに似合わずもの怖じしないどうどうとしたやつだと感心していたんだけど、
どうもただのおぼっちゃんで、人に怒られた経験がなかっただけのようだ。
ま、そういう経験も積んで、乗り越えたところでひとまわりほんとの大人物になるのだろう。
(ねこが人物になるわきゃないだろっ)