1/19ののらねこ 文は田島薫
ブラウン虚勢張る今朝も雪になるかも、といった天気予報があったくらい冷えていて、昼過ぎに
バットマンが上がって来て、ちょこっと頭をなでさせてから、ベランダのドア前
をひとまわりして、エサを食べずに帰って行っただけで、他にお客さんの姿は
見えなかった。
先週、事務所にいると、外でクキャ〜クキャ〜って、切羽詰まったような変な大声が聞こえてベランダ側のガラス戸の向こうにくろっぽい影が見えるので、上の透明ガラス
からのぞいて見ると、肥満のくろとらに向かってブラウンが威嚇とも悲鳴ともとれる
声を上げて後ずさりしているとこだった。
見てると、一歩踏み出したくろとらに、大声を上げながらブラウンは自分から仰向けに
ひっくり返って、両手両足をめちゃくちゃにばたばたさせている。
落ち着きはらったくろとらはそれに向けて、適確なネコパンチをくり出し始めたので、
戸を開けて、君たちなかよくしなさい、って言ったら、素早く逃げたのはくろとら
の方だった。少し遅れてブラウンも奥の方へ逃げるかっこをした。
見るとブラウンのいたところにしょんをちびった水たまりがあった。
ブラウンはさみしがりやで、いいやつなんだし、けんかに弱くてもいいんだけど、もうちょっとなんとか、落ち着いてやれないもんか。
弱いのに、威嚇してなんとかなるだろう、って発想がもう失敗の始まりのような気が
するし、最初から、わかったあんたの方が強そうだからあやまる、って言えばけんかに
ならなそうなんだけど、ちょっと虚勢はってどこまでいけるかやってみよう、って、
がんばって見たのかも知れないから、ま、いいのかな、ねこなんだし。