連載●文はクボユーシロー
貞熊現代アート研究所3
(セザンヌ)
日本人は印象派の絵が好きだ、とりわけセザンヌに弱い。いきなりだ
が、君は鈴木堅司という画家を知ってるか。「何、知らない?」 絵画
にまったく興味の無い君のために教えてあげる。彼は埼玉周辺ではとて
も高名な画家であると共にすばらしい美術教育者であった方。僕の高校
時代三年間の美術部の先生である。
今思うと鈴木先生の絵はみんなセザンヌだった。白状すると、その頃の
僕は画家の名前はゴッホとピカソぐらいしか知らないし、画家の名前や
画風にまったく興味が無かった。ただ毎日もくもくと何も考えず石膏
デッサンや油絵を描いている美術部員だった。失礼であるがその頃の鈴
木先生にも、彼の絵にも全然関心が無かったし何か話をしたという記憶
も無かった。先生に関して一つだけ強烈に覚えているのは美術教官室で
先生の描きかけの油絵を触ろうとして(どうして触ろうとしたのか記憶に
無い)すごーく怒られた事ぐらいである。卒業してからのほうが先生との
会話や絵を見る機会がずっと多くなっていた。
絵画に関して、僕は最近よく日曜日の9時から3チャンネル〉を見るので
画家の名前とか、○○派の影響などと言う言葉も聞きかじっていて少し
うるさくなってる。
数年前に鈴木先生の遺作展が北浦和の県立美術館で行われた時に始めて
じっくりとたくさんの絵を見せていただいた。セザンヌがたくさん並ん
でいた。 つづく