新連載●文はクボユーシロー
ユーシロさんの旅はまたずれ 1
(北海道・稚内)
以前から、すっごい寒さとはどんなものか知りたかった。北海道にさえ行けば誰にも文句を言われないすっごいのに出会えると
ずっと思ってた。大学を出て会社勤めを始め、ちょっと小金が出来た
のでその冬休みに「稚内だ!」と思い立ち北に旅立った(かっこいー)。
札幌から列車に乗り大雪の留萌で一泊、駅前の小汚い商人宿に
泊まった。六畳間の畳の上に鋳物のだるまストーブがじかに置いて
あり、小学校のと同じような石炭バケツも付いてた。壁が薄いのか
隣室の男女の音が聞こえた。
翌日、今は廃線になってる海岸沿いの単線を2両っきりのディーゼル車で稚内に向かった。進行方向左側の車窓にまばらな民家と暮れなずむ
日本海、海と線路に挟まれ雪原には除雪された国道がそこだけ濡れて
黒々と併走する(藤沢周平先生この風景描写どうでしょう)。
ポツンポツンとネーブル色した街灯が後ろに飛ぶ…谷内六郎が飛ぶ。
途中真っ暗な幌延駅で乗り換え「稚内行き」を待たされた。
ふきっさらしホームの階段下で1時間、北風ピープー雪コンコン
(古いっ)俺は永平寺の修行僧じゃないでしょーよー(茨城県南の方
言)。十時頃たどり着いた最北の駅稚内、また性懲りもなく小汚い
駅前旅館に泊まった(隣室の音は聞こえなかった)。
翌朝、バスに乗って最北のノサップ岬(後で地図を見たら最北は若干の
差で宗谷岬の勝ち)の灯台まで行った。結論から言うと「そこはすんげー
寒かった」今まで生きてきた中で一番寒かったと言っても過言でない、
やはり関東には無い極寒の風だ。この寒さには倭人に土地を取られた
アイヌ民族の恨みが入っているよねー(立松和平)。
ここでは口をあけて息を吸うとノドチンコがそのまんまツララ、肺が
すーぐルイベになるってえ知ってる。(マギーシロー)。
もうひとつ稚内で驚いた事、今日は特別におせっちゃう(田島鉄男)。
それはどこの店でもコーヒーがすんげー美味い事、今まで生きてきた
中で一番美味かったと言っても過言でない(武士に二言は無い)。
うそだと思うなら冬の稚内まで行ってえ、飲んでみろっ(語尾上がる、
西田敏行)。(連載続く)