8 /5ののらねこ 文は田島薫
いつものように空の皿にエサを入れて、午後になって、見にドア外へ出てみると、エサはそのままで、ベランダの行き止まり奥で、
バットマンが横になっていた。
彼は客の中で一番人慣れしている首輪をしたうそのらねこなのだ。
ブラシを持って行って、ブラッシングしてやる。気持ちいいんだか、いやなんだか、落ち着かずに立ち上がって、
私の後を廻ってまた戻って来る。で、またブラッシングしてやると、
また向こう方へ行ってから戻って来て、可愛い声でなきながら
体をすりすりして来る。そんなことをくり返して終わりにして
戻ろうとすると、ドアまで付いて来て甘える。
中に入って、窓からのぞいてみると、彼はもうなにごともなかったかのように、つまらなそうな顔をして元の場所で横になっていた。
いやいや、おいらブラッシングはあまり好きじゃないんだよな、なんとかごきげんとって、帰ってもらったけど、あーやだった、って、
思ってんじゃないんだろうな。