4/15ののらねこ 文は田島薫
きょうはやっぱり、知らない間にねことカラスがエサを食べて帰ったようだった。来た時にひと声かけてくれればいいんだけど、
このごろのねこやカラスはそういった心遣いをするものがいない。
で、先週の思い出、埼京線の板橋駅のホームの西側は、公団かなんかのアパートがあってその前が広い空き地で、柵塀はあるんだけど
雑草や樹木が何本かあって、私好みの荒れ地なのだ。
停車中の電車の中から、ホーム越しにそっちをながめると、そこを若い小さな白っぽいねこが、歩いて入って行くのが見えた。
しかし若いわりに元気がなさそうで、非常に動きがのろい。
不器用に前足を上げると草むらによろよろと踏み入れる。
腹がすいているのかも知れない。体が悪いのかも知れない。暖かいのどかな春の日ざしの中、ゆっくりゆっくり、
誰もいない柵塀の中の空き地の方へ歩いて行く。
春の草原とかわいいこねこ、ほらごらん坊や、ねこがいるよ。そんな視線と無関係に彼は、生きるためだけの孤独な戦いを
しているかも知れないのだった。