2/20のねこさん 文は田島薫
チビクロまっくろ忘れる 3
きのうの日暮時、近所のスーパーでビールと酒とキャベツとショーユ買って帰って来たら、
家の前の道にまたチビクロまっくろが座ってた。重い荷物を当人のそばに下ろし、すぐに
頭さわるのやめてからフェイントかけて手出したら、すっと立ち上がって、ちょっと伸び
するまねしてから数歩歩き、そばの貯水タンクの下に入ってまたすぐ出て、こっち見て何
か言いながらゆっくり歩いて行き、少し先でちょっと立ち止った後、またゆっくりどんど
ん歩き去ってしまった。
お、坂下りて人が来るね〜、エサくれるおじさんかな?ありゃ、ちがう、この前から、人
ちがいだ、って言ってやってるのにわかんないこまったさんだ。笑ってるね〜、もう目が
合っちゃってるし、ここで急に逃げてむきんなって追いかけられるのもやだから、ここは
じっとして、と、お、そばまで来て、荷物置いて、で、空いた手がこっちくっとやだな〜。
お、手がこないか?まだ来ないか?いつだ?おっと、今かー、あぶなかった、や、また、
ぼくは用を思いだしちゃったんだね〜、って感じで、きょうもあわててませんよ〜、ほら、
のび〜、って、さて、用事用事、ほら、このタンクの下に、…つっても、ちょっと無理が
ありそうだから、すぐに出て、あっちあっち、用事はあっちの方に、ほんとだよー、うそ
じゃないんだよー、なんちゃって。