12/12のねこさん 文は田島薫
チビクロまっくろが見てる
きのうの午後、近所のスーパーへビールを買いに行こうと家を出て家の前の坂を上りかけ
て後をふり返ったら、私の進行方向と逆のずっと向こうの路地入口にチビクロまっくろが
座ってて、こっちを見てる。お、って言ってそっちへ戻ってそばまで行きしゃがんだら、
もうそっぽを向いている。頭をちょいとなでたら、すっと立ち、それでも1〜2歩だけで、
そばから離れないで、ちょっと伸びをしてからまたそこへ座り込んだんで、今度はあごを
なでてやったら、じっとしてたけど適当にやめて立ち上がり、最初の目的地方向へ歩いて
行きながら坂上り後ふり返ると、くろさん、じっとこっちを見てる。
こ〜、ぼくがここで物思いしてると、なんでここでか、つーと、時々、腹へってないか?
って気使ってくれる人が通ってエサもらえる時があるからなんだよな。で、物思いしてる、
てーと、あ、ふるーいビスケットしかくれたことないあの人だ、どこ行くんだろね、おっ
と、やばい、目が合っちゃった。おいおい、こっち戻って来たぞ、いいから、いいから、
来なくて、って言ってる間にそばまで来ちゃって、おっと、頭さわられた、やめろ、って
思わず立ち上がっちゃったね、わりいわりい、別にそれほどわるい人じゃないんだし、そ
こまでロコツにいやがっちゃうと、気わるくされちゃって、後でいじわるされちゃうのも
めんどーだ、って、ことになってたんだった。はいはい、今度はあごですか、はいはい、
ぼくさえがまんすればこの場はおさまるんですな、はいはい。あ、満足して、もー行きま
すか?なんだ、もっとゆっくりしてけばいいのに、なんちゃって。戻って来ないように、
見張ってないとな、えーと、ありゃ、ふり返った、やばい、また目が合っちゃった。