3/23のねこさん 文は田島薫
闇に向かって走れ
晴れた土曜の午後、自転車で図書館へ行くついでに桜が開花してるか見てみよう、っ
てことで、いつもの道と代えて、駅へ行く時通る道の一本となりの道、小さな公園の
わきのあまり人通りのない細い道を通った。
コンクリのへいのついた線路と公園にはさまれたゆるやかな下り坂を走って行くと、
ちょっと先に、よくねこさんたちを見かけるアパートのいつもと反対側からとらねこ
さんがゆっくり歩いて出て来るのが見えた時、後ろから小さな車が、私を追いこして
行き、同時にわきの線路にも同じ方向に電車が来て、それに連動して、ねこさんも追
い立てられるように同じ方向へ走り出し、あっという間に道のわきの小さな側溝のふ
たのとぎれたところに走り込んで行って見えなくなってしまった。
ずーっと続くふたの小さな穴からのぞいてみようとしても中はまっくらでなにも見え
ない。ずーっと向こうの交差点まで行ってから、ふり返ってしばらく見てると、ゆっ
くりねこさんの頭が出て来て、またちょっと間をおいて身体全体が出て元来た道を歩
いて行くのが見えた。
天気もいいし、このあたりはけっこう静かな場所だからぼくものんびり散歩を楽しむ
ことができるわけなんだね〜、って言ってると、なな、なんだなんだ、なんか巨大な
もんががぼくをうしろから追って来る気配、思わずダッシュしたら、な、なんだ、こ
こは急に真っ暗なとこへ来ちゃった。しかし、この目まぐるしい展開はなんなんだ。
まったく、不思議なこともあるもんだ。こーいうのをきつねにつままれた、って言う
んだろーね、ねこがきつねにつままれた…なんてのんびりしたこと言ってる場合か!
どーしよーぼくはこれからこの暗闇で一生を過ごさなければならないのかな〜、って、
わけないだろ、うしろから光さしてるし。なんだ、思わずどっかの穴に飛び込んじゃ
っただけか、いつも冷静なぼくもなんだかあわてちゃったよーだね〜。