2/22のねこさん 文は田島薫
今度はうまちゃんがおあいそ
晴れて暖かいきのうの午後、私がビールを買いに行こうと玄関を出たら、またしっこ
をしに来たらしいうまちゃんが目の先にいて固まっていた。
おい、うまちゃん、って話かけると、しばらくこっちを見た後、この間のように走っ
て逃げるのと違い今回は、なに気なさそうにゆっくり向きを代え道路の方へ出て行き、
右に曲がり奥の家のアプローチのフェンスのコンクリ土台の裏側へ隠れた。
私をやり過ごしたつもりのようなので、買い物の方向と逆なそっちへわざとまわって
のぞき込んだら、アプローチの少し奥にとまってる車の前にうまちゃんがいて、しょ
うがないな〜、って顔をしていた(ほんとかよ)。で、また、おい、うまちゃん、っ
てしゃがみながら手招きしたら、その場にごろん、って寝転がってこっちに目向けて
から立ち上がり、車の横を抜けて向こうへ行ってしまった。
えっと、だれもいないこの時間、ここの草はえたとこでしっこすんのが気持ちいいん
だよな、って言ってると、ありゃ、またここんちの人出て来ちゃった。こないだは、
思わず逃げちゃったんだけど、今回は少し落ち着いて、えっと、走らなければ逃げた
感じには見えないんだよな。よし、あ、そだ、ぼく、ちょっとこっち散歩に来たとこ
なんだけど、忘れ物しちゃったようだから取りにもどることにすんね、って感じで、
ゆっくり方向代えて、右、左、と足を交互に出して、や〜、なんだか後ろからの視線
が痛いね〜、ここ出て右向いてから、いちにいちに、ここへ入って、と、もう見えな
いね、でも、あのしつこい人きっとこっち来るね。ほら来た。あれ、しゃがんで、手
招きしてやがるぞ、行くわけないだろっつーの。でも、ま、わるい人でもないわけだ
し、あんなに熱心に呼びかけられて無視しちゃうのも、ちょっと失礼にあたるかもし
んないから、ちょっとだけ、おあいそしてやっか、んと、ごろりん、で、どっ?も、
いいかな、こんなとこで、じゃ、行くからね。