11/2のねこさん 文は田島薫
行っちゃった
土曜の昼過ぎに自転車で食料の買い出しから帰って来た途中の下り坂下りたとこで、わが
家のとなりのバレエ教室の先生である奥さんが駅の方へ向かうのと会いあいさつした。
努力家の奥さんは、バレエの先生である今も、時々都内へレッスンを受けに行ってる、っ
て話を以前たまたま方向が一緒になった時に聞いたことがあったから、その日も多分それ
のためだったんだろう(なんでもいいんだけど)。
少し走りながらふり返り、坂をせっせと上って行く奥さんの後ろ姿を見てから前を向き、
150メートルほど走りわが家とバレエ教室がある横道への角を曲ったら、バレエ教室の梅
ちゃんが立っていた。
梅ちゃんはじっと曲り角の方を見てたんだけど、私を見ると、身体の向きをななめ向こう
に変えて、私の方から目をそらしながら、じっとしてる。
私はそれをじっとながめてると、また曲り角の方をふり返ってから、また顔を戻し、じっ
と考え事して、私の方は見ないで、またしばらくすると、曲り角の方をふり返る、ってこ
とを5分ぐらいくり返してから、自分ちの方へ歩を進め、また立ち止まりふり返る。
人間のおかーさん、出かけちゃうようなんだけど、おかーさんがひょっとして気をかえて、
出かけるのをやめた時にいっしょに帰らなくちゃいけないので、ぼくはそん時には、それ
にすぐに気がつくように曲り角までついて行くんだ。で、気がかわらないまま曲って行っ
ちゃったわけなんだけど、曲った向こうで気がかわって戻って来るかもしんないから、ぼ
くはまだまだ、ここで見張ってなくちゃいけないんだ。あれ、となりの人が曲って来たぞ、
ぼくが待ってるのはおまえじゃないだ!なんだか不愉快だから、目合わせんのやめとこう。
戻って来ないのかな〜、おかーさん。