1/5のねこさん 文は田島薫
忍者うまちゃん
正月明けの今朝、たまったビールの空き缶と酒の空びんでふくらんだ袋を両手に持って
同居人がゴミ置き場に行こうと家の前の道路に出たあたりで声がするので、2階のベラ
ンダから下見ると、うまちゃんがそこにいる、って全身で矢印をつくっている。
座ってるよ、そこに、って言った次の瞬間、あ、逃げた、って。
下見るとベランダの前のフェンスの向こうのとなりの家へ行く長いアプローチに止めた
3台の縦列駐車の車の手前をとととと、と小走りするうまちゃんが見えた。
当人はちょっと身をかくすような気分で少しフェイントかけて走ってるようなんだけど、
上からはその一部始終がまる見えなのだ。
われわれとお隣同士で、もう十分に顔見知のはずなのに、なかなかなれないうまちゃん、
そんなに遠くまで逃げるこたないだろうに、って思ってるうちにも、となりの家の正門
まで到着して中に入り、左折して物置きのすきまから今度はよことなりの家の敷地へ移
動すべく、ちょっと立ち止まってから、消えた。