3/17のねこさん 文は田島薫
うまちゃんひとりぼっち
自宅のまわりにうすちゃやら三毛やらを見かけるようになったな〜、って思っ
てたら、また見かけなくなったから、ガールハントの季節になって、ギャルの
いっぱいいる場所にみんな出張に出かけてる模様。
そんな中、相変わらずあたりを走ったり歩いたりしてひとり遊びしてるのは、
バレエ教室のうまちゃんだけだ。
きょうもねこさん見かけないね〜、って昼食に帰った自宅2階の居間のベラン
ダで食後の歯磨きして、あたりを見回すと、バレエ教室のわきのフェンスの端
にうまちゃんがきょうは走らずゆっくり出て来て、座った。
なんだか、虚空を見つめて、物思いにふけってる風で、いつもの元気が見えな
い、そりゃ、元気そうに走り回ってても、いつもひとりじゃ、ふと、サビシー、
って気分にもなんだろう。
ちょちょちょ、って舌で合図してみたら、音に気がついて、あたりを見回して
るんだけど、なかなかこっちには気がつかない。
やっと、こっちに気がつくと、じっと、顔を向けて、何か考え込んでいる。
うまちゃんがいるよ、って同居人に教えると、どれどれ、って出て来て、ふた
りでベランダから、うまちゃん、って声かけたり手振ったりしたら、なんだろ、
って自分の後ろをふり返ったりしてから、なんだか、どうも自分に対してのよ
うだ、ってやっとわかったらしかったんだけど、あまりその理由に合点がいか
ないようで、なんだよ、こういった時に、ぼくはなんて応えたらいいつーんだ、
や、どーも、って手上げて応えるわけないだろ、ねこが、って、思ったらしく、
しばらくすると、目をそらして、よこちょに引っこんでしまった。