1/7のねこさん 文は田島薫
孤独ねこさん
時々見回してるんだけどねこさん相変わらずあたりに見えない。
週末のお昼にクボセンセーがカキと白菜持ってカキ鍋やりに来る、って言う
んで、いつもは午後に行く食料の買い足しに午前中自転車で出かけて帰って
来たら、家の手前のバレエ教室の向かいにある露地の側溝の中にバレエ教室
の無愛想くろとらが、寒気の中、毛をふくらましてうずくまってるのと目が
合った。
あれ、めずらしいな〜、いつもは外で見る時は元気に飛び回ってるのに、き
ょうはなんだか、こっちを見る目も、寂しそうな、不審そうな。
バレエ教室の方見るとどうも留守のようだし、きのうの晩も静かだったから、
ひょっとするときのうからどっかへ泊まりがけで出かけたのかも、いや、そ
んなこたないか、って思いめぐらして、ずっと見合ってるんだけど、今まで
の経験で、こっちが近づくとさっと逃げてしまうに違いないので、せっかく
風よけの側溝を確保しているのをじゃましちゃいけない、って思い、しばら
くしてから、ほっておいたまま、その場を離れた。
バレエ教室の泊りがけの外出は多分思い過ごしだろう、と思ってたら、夜に
なってからバレエ教室を見たら家中灯りが消えたままだったから、やっぱり
出かけていたようだ、ま、エサなどの用意はしてあったに違いないんだけど、
くろとらは、孤独と絶望感の中にいたのかも知れない、みんなは楽しいお正
月だ、っていうのに。
でも、翌日の夜は灯りがついていたから、彼も肉球でほっと胸をなで下ろし
たことだろう、よかったよかっためでたしめでたし。