1/22ののらねこ 文は田島薫
見つめ合い
午後の今は春のような快晴になってるんだけど、午前中はうす曇りで冷たい雨が降
った後らしく、うら寒い天気で、ココア食堂へのねこさんの出足がわるそうなので、
すぐに路地の見回りに行った。
北側の小さな庭の家の玄関ステップにくろとらがななめ向こうを向いて立っていて、
どうしようか考えている風情だったのを、じっとながめていると、向こうもこっち
に気がついて、目が合ったんで、そのままじっと見てたら、向こうもこっちをじっ
と見ている。
で、じっと見続けていたら、向こうもじっと見続けているんで、なおもじっと見続
けていると、向こうもなおもじっと見続けている。
で、さらに見続けていると、向こうもさらに見続けていて、初め体の構えもじっと
固定してたんだけど、じょじょに腰を落として、次に首と前足の位置もだんだん落
として行きながらじっとこっちを見ている。
で、けっきょく、けっこうくつろいだ体勢になっても、こっちをじっと見ているん
で、こっちもじっと見ていると、少しまばたきして、目を細くしたりして、また、
思い出したようにこっちをじっと見つめる、こっちはやっぱりじっと見続けている
と、また目を細くしたので、こっちの警戒を完全に解いた、って判断して、じゃ、
って言って別れた。
南側の路地へ行くと、弁当屋の前に置かれた段ボールの上に、まだらのくろがいて、
くつろいでいるようだったんで、またながめてると、彼もこっちに気がついて目と
目が合ったんで、じっと見てると、今度の相手はちょっと落ち着かない感じで目が
泳いでいて、こっちにじっと目を合わせ続けることをしない、どうも、やな感じだ
からこの場から去りたいんだけど、段ボールの温さが捨てがたいんで、困ってる、
ってような風情に見えたもんで、そのままそのまま、って言ってから別れた。