5/16ののらねこ 文は田島薫
新人シロペルシャ朝出勤の途中、いるかな、って思って見てみると、先週と同じ場所で薄汚れた
白の毛の長いペルシャ系がくつろいだ顔で寝転んでいた。
きょうはよく見ると、足元に小さな瀬戸物容器が置かれていたので、だれかが
水をやってくれたらしい。
のらねこにエサやることは考えても東京のコンクリだらけの環境だと、水を
飲むのもけっこう大変なんじゃないか、って思ってたのでよかったよかった。
先週あたりから私の事務所のちょっと手前の路地の小さな食品会社の玄関横のタイル製花壇スペースの縁にひんぱんに彼がいるようになって、腹減ってる
かもと思い、先週末帰る時、カリカリフードをひとにぎり持って行って、そこ
の場所に置いた。
珍しくどっかへ出かけているんだな、って思ってその場を離れようとした時、
どこからか、ふいに彼が出て来て、ゆっくり私の足下をすり抜けてエサに真直
ぐ向かって行き、あまり喜んだ顔も見せずに食べ始めた。
そばで見ていて、これ持って来たの私だかんな、ってちょっとわかってもらおう
と思ったんだけど(安いエサちょっと持って来たぐらいで、恩着せがましー)、
そんなことは、どーでもいいの、って感じでこっちの方には意識が向かないよう
だったから、さすが堂々とした本物ののらねこだ、って感心したのだった。