3/1ののらねこ 文は田島薫
きょうから3月だっていうのに朝から猛烈な寒さで雨まで降ってきちゃったりして、
お客さんは全然来ないようなので、先週のばかばかしい小さなお話で、失敬を。
夜事務所で酒を飲んだ時はいつも最後にそばを茹でて食べるんですが、そのめんつゆが切れたので(そんなこたー、どーでもいいっ)うちの事務所のあるビルのわきの
狭い路地を伝って目と鼻の先にあるスーパーへ行ってすぐ戻って来ると、このところ
しばらく顔を見せないブラウンとばったり会った。
ブラウンは、おっ、といった顔で立ち止まり、すぐに少し寂し気にそばにあったバイクと建物の壁のすき間に隠れた。
のぞき込むと、向こうもこっちをじっと見てるんだけど、こっちの思い過ごしかも
知れないけど何だか少し、気落ちしてるように見える。
彼は来なくなる直前、事務所のベランダでくろとらにけんかを挑んで惨敗していたのだ。
最近はくろとらはよく来てるみたいだし、テリトリーを奪われちゃったと思っているん
じゃないかと、シャンさんとうわさしてたもんで、余計そういうふうに見えた。
ブラウン、どうしたんだい、来ないじゃないか、だいじょうぶだから、来いよな、などと話しかけたけど、そうは言ってもなー、といった顔をして困っている。
どうも、負けねこの気分を全身で感じているようだった。
ま、繊細で争いごとが不得意で、かといって、子分にしてください!なんて調子よく
やれない者にとっては、ねこの世界ってのもけっこう大変なんだろう。