6/7ののらねこ 文は田島薫
朝出勤すると、朝1のシャンさんがきれいに洗った皿が出されてあったけど、エサは入れられてなく、水だけ出されていた。
そばの水道メーターのふたには、お客さんの誰かがしっこをかけていて、
いい陽気の中で、それの臭いがあたりの雰囲気を支配していた。
お客さんが来たらエサ出そう、と思ったシャンさんが気がつかないうちに
誰か来て、エサがないのに腹を立てたのかも知れない。
エサを出しておいて、しばらくして見てみても減ってなかった。昼過ぎに、ねこ来ませんか、って、シャンさんに聞くと、全然見てない、って
言うので、やっぱり来ないか、って言いながら、ドアの外へ出てみると、
バットマンがエサを食べていて、ひょいとこっちに目を合わせてから、また
しばらく食べていたのを、歯を磨きながら、そばに腰掛けてながめた。
バットマンに、前はブラシを持ち出して、ブラッシングしてやろうとしたことがあったんだけど、ブラシ嫌いの彼はその都度大急ぎで逃げて行くので、
このごろは声をかけるだけにしていた、で、食べ終わった彼におーい、って
小声で声かけたら、彼も階段の手前で立ち止まって、少し何か考えていた、
この人と会話を続けるべきか、どーか、こっちも、特に彼に伝えたい話も
みつからなかったし、彼の方でも、私に言いたいことは何もなかったようで、
そのまま階段を下りて行った。
バットマンが帰った後で、さっきまで晴れていた天気が曇って来て、やがて天気予報通り、雨になった。
きょうはもうお客さんは誰も来ないのかも知れない。
あるいは、来たのに全然気がつかないかも知れない。