11/5ののらねこ 文は田島薫
きょうも一番客はツートンカラーだ。ドアよこの窓から見ると、階段の下り口の前に立つ彼と目が合う、
おう、うっ、といったあうんの会話で、ささとエサへ行ってから、
クボセンセーが先週作ったねこボール箱ハウスの「よこ」に座り込んでくつろいでいる。(ねこボール箱ハウスは屋根がなく、
さっき見たら、ねこが座った形跡の抜け毛などがぜんぜんなかった)
ドア前からつづくベランダが事務所のガラス戸から見えんのだけど、(ガラスの下半分は向こう側がよく判別しにくいエンボス状のガラス
になっていて、ねこが来ると動くねこパターンで見えるのだ。)
そのはじっこの排水溝に肥満くろとらが、しっこに来た。
彼はのらねこのわりに、きちんと公衆道徳を守る性格なのだ。
来た時にボール箱ハウスのかげのツートンカラーに気がつかなかった
らしく、帰る時はじめて向かい合い、じっとにらんでいる。
ツートンカラーは気にしないふりをしていたのだが、3分で根負けして階段を下りて行った。
肥満くろとらは、落ち着いて余裕を持った足取りで追いかけるふり
をして、階段のところまで行き、下を見ながら王者のように満足気な
表情をしながら、ゆっくりこっちを振り返った。
窓から顔を出した私と目が合うや、ととととと、っと彼も階段を駆け
下りて行った。
彼はやはりきちんとしたほんものののらねこなのだ。