●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回は、もどきさん、その街に心が動きました。
町を歩けば 1
町の魅力には、混とんの魅力と整然の魅力に分けられる。
先日、演劇を観るため川崎市の宮前平という町にある宮前市民ホールへ行ったのだが、
整然としたお行儀の良い印象の落ち着いた町だった。
宮前平の町はとにかく起伏が激しい。
駅から市民ホールまでは登り坂が延々と続き、上るには相当キツイので、バスに乗り、
帰りには下り坂を駅までぶらぶらと歩いた。
歩道脇に整然と並ぶプラタナスの街路樹があり、この街路樹の美しさがこの町の魅力
のひとつになっている。
プラタナスはかなり成長していて背が高い。だが、どれも形が整えられ、手入れが行
き届いている。きっとこの並木道は町のシンボルなのだろう。
駅からの道なのに道路沿いには商店街もなく、人通りは学生やら勤め人やらと結構途
切れない。
道路沿いは近代的なマンションや個人住宅が道から一歩下がって、さりげなく建って
いる。
そのゆとりの場所に、疲れたら“一休みどうぞ”とばかりにベンチまで備わっている
のだ。いかにも思いやりとゆとりを感じさせるではないか。
並木を見上げると、プラタナスの大きな葉が五月の空をかなり覆っているのだが、茂
る青い葉のすきまから陽光がこぼれ、歩道に模様をつくっていた。
ふと、私は街路樹がステキなこの落ち着いた街を絵に描いてみたいと思った。