●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、マイペースな先生に少し戸惑ってます。



上手い絵とは?


今までいろいろな絵画教室に通った。

今の教室の先生は絵の基本を懇切丁寧に説明し、私の描いた絵も目の前でど

んどん修正する。すると、私の描いた絵はみるみる先生流のすばらしい絵に

変わっていく。

先生は「芸術は模倣から始まります」と言い放つ。

なるほど、絵には模写という勉強方法もあることだし…と私は直されてすっ

かり芸術的に味わいのある絵になった自分の絵をつくづく眺める。

だが、垢抜けた味わいのある絵になったという喜びはあるが、どこか他人事

である。

同じような絵を私一人で描けるだろうか? いや、やっぱり描けない。これ

は先生の絵であって、いくら上手でもどこか不自然になる。

誰にも束縛されないで、自分の描きたい本当のことを自由に表現できるよう

になり、自分で納得できる作品になったらどんなにいいだろうか。

今までそのためのテクニックを先生から教わっているはずだった。

やはり才能というものがないからだろうか。

それでも、人には表現欲というものがあって、作品ができたら発表したくな

るものである。

展覧会とは、自分の立場や主張をさらけだすとともに、ある種の自分の心の

告白かもしれない。

告白と言えば、例えば、罪はないけど病気自慢というのがある。

ぺらぺらとすべて事実をさらけ出す話でさえも、それがたとえ失敗談でも、

成り行きによっては誇張したり受けをねらったりで、自慢になりかねない。

つまり、上手く表現しようとすると落とし穴があって自慢になりかねないの

である。

問題は、自分の思うところをどのように告白するかなのだろう。

それを学びたい。


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